[天覧山・巾着田から入間市博物館+盈進学園東野高等学校] 無音の黒



3-7 無音の黒


東野高校の建築では、形も特徴があるが、色の印象も強い。
またブローティガン「西瓜糖の日々」の引用−

 ここの太陽のことは、おもしろい。毎日、違った色で輝くのだ。どうしてそうなのか、誰にもわからない、チャーリーにだってわからない。わたしたちは一所懸命、いろいろな色の西瓜を育てる。
 どういうふうにやるかといえば−。灰色の日に採られた灰色の西瓜の種子を灰色の日に蒔くと、灰色の西瓜がとれる。そういうふうにやる。
 じっさい、じつに簡単だ。日々の色彩と、西瓜の色の関係は次のとおり−
月曜日 赤い西瓜
火曜日 黄金色の西瓜
水曜日 灰色の西瓜
木曜日 黒色の、無音の西瓜
金曜日 白い西瓜
土曜日 青い西瓜
日曜日 褐色の西瓜
 きょうは灰色の西瓜の日だ。わたしは明日がいちばん好きだ。黒色の、無音の西瓜の日。その西瓜を切っても音がしない、食べると、とても甘い。
 そういう西瓜は音を立てないものを作るのにとてもいい。以前に、黒い、無音の西瓜で時計を作る男がいたが、かれの時計は音を立てなかった。
                            (西瓜糖の日々 前掲)



アレグザンダーは、東野高校の設計にあたり、対話を重ねるのに並行してこの地域を歩き回り、地域の材料や表現を取り入れている。外壁の一部や講堂内部の黒い色は川越の黒漆喰で、手間のかかる工程を期限内に完成させるために、この技術をもつ人たちが3か月住み込みで制作にあたったという。このことが川越の漆喰の伝統を残すことにもなったという。

盈進学園パタンランゲージには、静かという言葉が幾度もでてくる。
実際にキャンパスを歩いてみての印象も静かなものである。
キャンパスの風景を特徴づける無音の黒。
雑多で賑やかな風景の中ではなく、静かだからこそ、そこに生き生きとした活動が生まれる。
この高校では校則も制服もない。伸びやかに過ごす生徒を信頼する教師と、それに応える生徒。
建設当初、白い漆喰の壁では落書きされると心配をする意見もあり、実際に落書きされたこともあったが、生徒たちが自主的に消したという。

「わたしたちは西瓜糖で心をこめて生活を築いてきた。」ように、心をこめて作られた建築に、心をこめた学園生活があるのだと思う。





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